2022/05/14

Policy
数値的要素で判断できない
違和感を検知できる力。

クラブは美しくなければならないーー、
それはフォーティーンのポリシーを全うする部署。
少しの傷や規格外の不良品を見逃さないのは当たり前、
数値だけでは判断できない違和感を検知する
フォーティーンの品質管理課をご紹介したい。

取材=ゴルフメディア編集部

フォーティーンの検品は
業界で“厳しい”と有名

「検品作業」。それは製品が発注したとおりの規格で納品されているか、性能や品質に問題がないかを、検査する緻密かつ繊細な作業のことをいう。フォーティーンヘッドオフィスに置かれる品質管理課は、ゴルフショップに完成品が納品される直前の最終砦、部署を取り仕切るのは新井明生さんだ。

「フォーティーンの検品精度は・・・ちょっと業界では厳しいと有名なんですよ」と新井さんは話す。一般的にゴルフクラブにおけるヘッドの検品作業は、ライ角、ロフト角、そして表面の傷や塗装の状態を検査。ウェッジに至っては溝の幅や深さなども検査項目に加わり、この工程で性能と品質の約束するのである。さらに、フォーティーンの検品精度は、一般的な数値的要素の検品だけでなく、外観の美しさに妥協を許さないことが追加される。それが業界随一の厳しさとされている所以だ。

ゴルファーはヘッドにシャフトを装着した状態で、構えやすさにこだわる。私たち品質管理課にその観点はいっさいなく、ヘッド個体をこねくり回して、あらゆる方向から違和感を見つけ出していくのです。

 「一箱25個、または50個というロットで検品作業していると、ちょっとした表面の精度や肉厚の歪み・不偏さなど、小さな違和感を検知できるんです。それは決して数値的なものではないし、人の目が違うと感じないものであるかもしれない。フォーティーンでは私を含め6名のスタッフが検品を担当していますが、それぞれが違和感を妥協なく弾き出し、責任者である私がそれを再度確認して、スタッフの検品感性を擦り合わせていく作業も怠らないようにしています。過去には問題ある商品に、ほぼ全部NGを出したことも・・・(苦笑)」。

 その作業工程のシビアさは知る人が聞けば、まるで“重箱の隅をつつく”ことに聞こえてしまうかもしれない。厳しすぎる検品作業によって不良品が多発してしまえば、製造コストの拡大、また納品の遅延にも繋がってしまいかねない。しかしフォーティーンという会社には、“クラブは美しくなければならない”という創業以来のポリシーがある。それは単純にデザインや構えた時の美しさだけでなく、新品を購入されるお客様に対して性能の補償、そして美観の完成度を保証することがメーカーとしての使命であり、その精度はフォーティーン品質管理課の譲れないポリシーなのである。

モノを見さだめる
研ぎ澄まされた目

 新井さんが入社したのは今から約22年前、「MT-28」で一世を風靡していた時代だ。もともと創業者の竹林隆光とは釣り仲間という縁があっての入社。以来、品質管理課一筋に従事して今に至る。入社した当時、新井さんにゴルフの経験はない。

 「もともと釣工房で精密な道具を手作りしていた経験もあり、そんな私の経験を知ってか知らずか、釣り仲間だった竹林さんからお誘いの電話をいただきました。当時、フォーティーンはクラブのOEM設計からメーカーへの転換期にあり、開発・製造部門でスタッフの補充が急務でした。私は自身にゴルフ経験がない心配はありましたが、竹林さんは『精密なモノを見定められる、先入観のない目』が必要と優しく応えてくれた。それから当時の開発部に所属し、自分なりのやり方を模索して、今に至るフォーティーン品質管理の精度を向上させてきました」。

昨今、製造工程が進化した鍛造ヘッドの場合でも、ちょっとした不手際によって、予想しない箇所の形状の変化が生じてしまう。量産モデルにおいて、この違和感を見つけられるか、見つけられないかが、品質の約束に直結している。「よく〇〇さんより厳しい、と工場から冷やかされます」。

 昨今は長く続くコロナ禍によって、社内の検品作業はより強化されている。それは海外工場とのコミュニケーション不足による製品精度の低下が懸念されていることにある。コロナ前、新井さんは自らの足で海外工場へ足を運び、現地でフォーティーンが絶対とする品質の考え方を共有する機会を怠らなかったが、その工程が途絶えたのである。

 「言語の壁や直接、工場のスタッフと会えないことのコミュニケーション不足は否めない。ただ、私たちの妥協しない姿勢は、長い間で培ってきたやりとりの数々で現地工場にも十分伝わっていることは間違いありません。新作『TB-7 FORGED』に至っては、性能だけでなく様々な生産的不安要素までも解消された素晴らしいヘッドであり、私たち品質管理課の目で見ても、不具合を見つけるのが困難なぐらいに生産精度も確実に上がっている。逆を言えば我々の検品精度に不安を感じるぐらい、素晴らしい出来です(笑)」。

「創業者の竹林は、『カッコ悪いものを買ってもらうのは嫌だよね』と、私たちにフォーティーンのポリシーを説いてくれ、私たちの検品作業がゴルファーの安心を約束している最後の作業であると、大雑把に説いてくれましたね(笑)」。

 今日もフォーティーンヘッドオフィス、3階では黙々と厳しい検品作業が行われている。不良品を見せていただくと、常人にはとてもそれを見つけ出せないだろう、細やかな指摘がマーキングされていた。この精密作業を実際に目にすると、一人のゴルファーとして、クラブ1本1本の完成までに費やすプロセスの多さ、そしてその製造工程に対する緻密さに、改めて感服させられてしまう。市場で評価されるフォーティーンのプロダクトは、品質管理課の厳しい検品なくして成り立たたない・・・その事実を一番分かっている他部署のスタッフたちは、品質管理課の妥協ないこだわりに“フォーティーンの誇り”を見ているようだ。