すべてはお客様のために。受け継がれる竹林イズム 前編
フォーティーンと言えば、創業者の故・竹林隆光が世界初となる中空アイアンを設計したり、いち早く長尺ドライバーを製品化したり、あるいはノーメッキの激スピンウェッジを世に送り出したりなど、“常識に捉われない”商品開発に定評があります。
しかし、それらはただ単に奇を衒ったものではなく、アマチュアゴルファーが「打てなかったボールが打てるようになる」ためというブランド哲学に沿ったものであり、そのすべてが、“アマチュアゴルファーのために”向けられているものなのです。
そんなフォーティーンの哲学を、営業部の三好海土に聞きました。
お客様に対してなるべく寄り添う
――フォーティーンというと、とても細かいところにまでこだわっているクラブメーカーという印象があります。
三好 スタッフとしては「それが当たり前」と思ってしていることが、お客様と話していると「えっ、そんなことまでやっているの?」なんて言われて、そこで気づくこともよくあります。
それは、創業者の竹林から引き継がれてきている考え方で、「できることはやってあげよう」というものです。
大手のメーカーさんだと「いや、ちょっとそれは細か過ぎてできないです」ということがあったとしても、できるだけ対応したいと思っています。
たとえばバランスのオーダーでも、クラブは短くしたい、でもバランスは下げたくない……という注文があったとします。
バランスと長さって密接な関係があるので、普通は「すみません、ちょっとそれはできないです」で終わっちゃう話なんですが、弊社の場合は、伝統的に「そうは言っても、これ何とかなんないですかね?」っていう感じで作業をします。それでできるのであれば、「どこまで近づけられるかわかりませんが、こんな感じでできそうですよ」という話をします。
つまり、お客様に対してなるべく寄り添うようにしているという風潮がまずあるのです。
――ということは、お客様とのコミュニケーションがあって、それを前提にクラブを組み立てていくということですか?
三好 そうですね。お客様からの要望を受けるのは私も含め営業部ですが、お相手はお店だったり、その先のお客様から直接お問い合わせをいただいたりします。そこから製造部に対して「こんな要望があるんだけど、できるかな?」という話をします。
もちろん営業部のほうでもある程度の範囲で「これは厳しいんじゃないか」という基準はあるのですが、ダメ元で「ちょっとどうかな?」って製造部にお願いしてみます。
――ということは、他社がどうこうという話ではないのですが、商品をメーカーとして設計して、製造して、ポンってお店に出して終わりということではないんですね。
三好 そうですね。そういう感覚はないですね。たとえば、弊社で取り扱っていないシャフトでも「装着できる?」って聞かれれば、「時間はかかりますけどいいですか?」と返して、シャフトメーカーさんと話をして卸してもらえるようになった、なんていう話もあります。
シャフト、グリップもすべて計測してベストな組み合わせを決める
――製造に関して、特に気を付けていることはありますか?
三好 シャフトやグリップも1本1本計測してから組み立てています。たとえばグリップは、組み立て後のバランスを想定して、1本1本グリップの重量を選定しています。
ヘッドが少し軽いものがあったとして、グリップでも少し軽いものを見つけて、それを組み合わせれば出来上がりで揃う、みたいな感じですね。
――シャフトとヘッドの組み方はどうですか? たまに真っすぐ差さっていないものもあったりして……。
三好 当たり前ですけど、真っすぐになるように組み立てています。クラブはネックの形状によって見え方が変わるので、ネック形状に合わせて挿し方を変えています。構えたときに違和感が出ないよう、1本1本作りこんでいます。
――そういった真っすぐの出し方ですとか、構えたときの見え方のようなものは、どのようにして担保しているのでしょうか。
三好 弊社には熟練の組み立て担当が複数在籍していますが、定期的にお互いの作業を見合って、意見をすり合わせて、感覚を標準化するようにしています。
――ちなみに、同じお客様からの注文は同じ人が組み立てを担当するんですか?
三好 はい。ウッドとアイアンで違う場合もありますが、同じタイミングの注文書で、アイアンとウェッジが同じ人からの注文だ、なんていうときは同じ人間が担当をします。
ライ・ロフトゲージの開発は必然だった
――フォーティーンと言えば、全国の工房でも使用されているライ・ロフトゲージ(測定器)を自社で開発していたりしますよね。
三好 弊社はもともと設計会社から始まっているのですが、そういった考えから重心の概念を提唱し、他メーカーに先駆けてその概念を取り入れてクラブ開発を行ってきました。
そういった考え方の中で、やはり、「このクラブはどういう数字で、どういう角度なんだろうか」とか、測れないと比べられないじゃないですか。
30~40年前は、数値を測る機械も世の中に存在せず、測り方も基準があいまいな部分があったのですが、それだと竹林自身が理想とする仕事ができなかったのでしょう。基準を作らないことには比べられないというところからライ・ロフトゲージの自社開発に至りました。
なので、最初は自社基準をつくるという目的ではありましたが、その精度が高かったということで、同じような疑問や問題意識を持っていた工房をはじめ、トーナメントにおける他メーカーのツアーバンや店舗などでも弊社のライ・ロフトゲージを使ってくれるようになりました。
――竹林さんの思想や哲学に、組み立てのお話や、なぜライ・ロフトゲージをつくったのかというところがすべて紐づいてくるわけですね。
三好 組み立てできっちり作るのは、設計で意図した性能をきちんと出せるようにするためなわけです。弊社の心臓は設計にあると言ってもいいので、意図した性能が発揮できるように組み立てにこだわる、というのが根っこにあります。 後編へ続く(2023年5月1日公開予定)