RM-4 デザインストーリー “既存を覆せ”
新ウェッジ「RM-4」には細部に至る高精度な仕上げと、新発想『ステップブレード』が搭載されている。
開発担当の鈴木浩之氏が構想するパフォーマンスの理想像を、クラブデザインとしてカタチにする
フォーティーン専属デザイナー・手島彰氏のタッグでなし得た1年半に渡った月日の結晶なのだ。
取材・文=ゴルフメディア編集担当
撮影=小林司
一目でわかるパフォーマンスを表現できるフォーティーンのデザイン
フォーティーンゴルフクラブ専属デザイナー 手島彰
Teshima Design Studio
SUBARU・初代IMPREZAのデザインを手がけ、PLUSにて家具のデザイン・企画開発を経て、
テシマデザインスタジオを設立。自動車関連、アイウエア、生活用品、
医療機器など工業デザインを軸にブランディングまで、デザインの対象は多岐にわたる。
手島氏がフォーティーンとタッグを結んだのは、今から13年前。当時、フォーティーンのプロダクトとフィーリングがマッチする優れた工業デザイナーを探していた竹林隆光(創業者)が、自動車用アルミホイールでグッドデザイン賞を獲得した手島氏に、コンタクトを取ったのがきっかけとなった。ちょうど手島氏が独立する運命的なタイミングでもあった。
手島氏はSUBARUにて初代IMPREZA(WRC三連覇)のデザインを手がけたことを皮切りに、高性能自動車パーツやJINSアイウエアなどのデザインを手がける。ターゲットユーザーの琴線に触れる“機能感”と“素材感”を、フォルムの美しさとして表現することを得意にしている。
『私が竹林さんから教わったフォーティーンのクラブデザインの美学は、“流行を追いかけないこと”です。12年前、「TC-1000」というアスリート用アイアンが私のデビュー作となりましたが、当時の私はフォーティーンらしさとは何か模索しながら、デザインを手がけました。しかし、竹林さんからは、「らしさは表現しなくていい」とある自由を与えられた。私が感じるフォーティーンの世界観の中に、これまでにないようなプロダクトロゴデザインを施し、数ある候補の中で一番“らしくない”ものが採用されたことが、私にとって進むべき指針のベースとなったように思います。しかし、あまりにも“らしくない”提案ばかりでは、ユーザーが抱くフォーティーン感が損なわれてしまう。私がまず提案したのは、ブランドロゴの中にある羽の独立化でした。』
『羽を見ればフォーティーンと一目でわかるシンボルにできれば、よりシンプルかつ洗練したデザインに導くことができるからです。』
手島氏が手がけたウェッジデザインとして、衝撃的だったのは今から10年前にカタチにした“逆テーパーブレード”だ。工業デザインとしてトップブレードの工夫にアイデアを持っていた手島氏は、機能的根拠を確認するべくフォーティーンに持ち寄る。当時、角溝規制によりトップブレードに厚みを持たせ、ヘッドの上下挙動を安定させる新たな機能を構想していた開発部と意見が一致して“逆テーパーブレード”の原型が生み出されたのだ。
『竹林さんから学んだポリシーとして、“写真を見て一目で性能を伝わるように”というフォーティーンの美学がありました。“逆テーパーブレード”は、トップブレードに厚みを持たせたことで、上下打点のブレへの強さを象徴的にできた。またブレード部を効果的にステップデザインとしたことで、構えた時にはその厚みが気にならない工夫も凝らしました。他メーカーがこのデザインを模範するほど、ウェッジの機能の象徴となれたことは、フォーティーンの既存にこだわらず新たなものをカタチにする優れた開発力の賜物であることは間違いありません。』
7年前に竹林が亡くなり、様々な開発担当者とタッグを組んでクラブデザインを施してきた手島氏。担当者の思考は変われど、企業のポリシーとして竹林イズムが受け継がれ根本は変わらないことを強調する。それを証明するかのように、既存を覆して生み出されたのが『ステップブレード』が搭載された新作「RM-4」だ。
『「RM-4」を構想する際にテーマとしたのが、“逆テーパーブレード”を進化させること。それを発想したフォーティーン、そしてそれを愛用してきたユーザー、両者の慣れや飽きを払拭することを絶対テーマとしました。そして機能的根拠に基づき、さらにトゥヒール方向に厚みの変化をつけた新『ステップブレード』をコンビネーションさせるデザインに至ったというわけです。また中央くぼみ部、一番肉厚が薄い部分には、CNC加工を施していますが、既にその手法は他メーカーでも採用されていてユーザーの皆様には既視感が付きまとってしまう。フォーティーンらしいひと工夫として、光の当たる際の美しさを求めて、斜めにデザインすることにこだわりました。製造技術的にとても難易度の高い手法ですが、製造工場に無理を言ってまでも妥協なく実現化させしまうのが、フォーティーンというメーカーなのです。』
見た目に機能感が表現され、そしてシンプルにフォーティーンらしい洗練さまで兼ね備えている「RM-4」。カーデザインやアイウエアなど、多様なジャンルの工業デザインで機能感と素材感の表現とフォルムの美しさを手がけてきた手島氏のデザイン技術と、フォーティーンの貪欲に新しさを表現する世界観が見事に融合している。これまでユーザーとして20年にわたりフォーティーンのプロダクトを見てきた筆者も、第三者的立場の意見として傑作に感じる最高の出来栄えだ。
『ユーザー目線でそう感じてもらえたなら苦心の日々が素直に浮かばれた感じがします。シンプルな中にもファンを裏切るような意外性を考えるのがフォーティーンらしさ。「RM-4」はこれまでのプロダクトよりも多くの時間をかけ幾度となく製造技術的にクリアな限界でデザインを成熟させてきた、私のフォーティーンのデザイン歴でも最も難易度の高かったモデルとなりました。』