2019/12/14

進化のイデア 第九章

進化のイデア 第九章

フォーティーンは現代に至るゴルフクラブの進化の礎を作り上げてきたメーカーである。その道を導いてきたのは創始者・竹林隆光。職人の勘に頼っていたクラブ作りに力学を導入し、既存と一線を画したアイデアを形にして、ゴルフクラブを進化させてきたのだ。

記事提供=ゴルフクラシック

竹林隆光


たけばやしたかみつ、1949年東京都生まれ(2013年没)。大学からゴルフを始め、卒業後ゴルフメーカーに就職する一方で競技ゴルフを続ける。77年日本オープンではローアマを獲得。81年に独立し、フォーティーン創立。内外メーカーのヒットモデルを設計・開発。00年を迎えるころには自社モデルを幅広く展開。中空アイアン『HI-858』、強烈スピン『MT-28』ウエッジなど大ヒットモデルを世に送り出す。

九章 誰もが驚愕した 超飛距離48インチドライバー

常に長尺の道を
歩んできた



90年代後半、竹林は世間をあっと驚かすクラブを送り出す。GET LONGEST DRIVEの頭文字から取った『ゲロンディー』ドライバーがそれだ。何が驚きだったかと言えば、48インチ、その長さにあった。

当時の長さを平均すれば44.5〜45インチといったところ。そこへいきなりの3インチ(7.62㎝)アップ。その名が意図するとおり、「誰よりも遠くへ飛ばしたい」という願いをかなえるドライバーだったが、当初ゴルファーは面食らったような印象もあった。というのも、とかく長尺に対してゴルファーはまゆをひそめる傾向にあるからだ。

ただ、それは織り込み済みのことだった。42.5インチないし43インチの時代に44インチ、44インチ時代には45インチ、常に一歩先の長さを提案してきたフォーティーン。その都度、ネガティブな反応はあったものの、結局クラブもゴルファーも長尺の道を選んできた。フォーティーンは長さが飛ばしに有利なことを確信し、そのスタンスがぶれることは一度としてない。

「正直言えば48インチはやりすぎかな、そう思う部分もありました。ただ、当時は新しい機能を持ったクラブが出てこない時代で、売れない、売れない、皆、口を揃えたようにグチをこぼしていました。そんな閉塞感を打ち破りたかった。私には珍しく“使命感”にかられたんですね(笑)。ですから、よりインパクトある長さにこだわりました」。

90年代序盤から始まった低重心競争が一段落し、新しい方向性が見えてこなかった時代。そんな中での48インチ。振り返れば、“超尺ブーム来る”など、長尺を超え、「超尺」なる言葉も生まれ、雑誌でもいろいろな企画が組まれた。

確かにその飛びは圧倒的で、他メーカーも即座に反応。さらに、片山晋呉や横峯さくらの使用も手伝って、48インチはゴルフ界に新しい風を吹き込んだ。

長さ

ローテ小で
いかに飛ばすか



発想は意外、プロゴルファーからヒントを得たという。

「昔、モー・ノーマン(カナダ)というプロがいて、スイングは特殊ですが、ピカイチのボールコントロールをしていました」。

実際、調べてみると、№1のボールストライカーと当時の数々のトッププロが絶賛している。

「よく見ていると、スイング中にほとんどリストターンを使っていないんですね。フェースがローテーションしていない、僕はそう理解しました。ただ、フェースローテーションが小さいと当時のクラブでは飛ばしには不利。そこで、小さなローテーションでも飛ばすためにはどういうヘッド、シャフトが必要か。その答えが『ゲロンディー』で、48インチという長さだけではなく、ヘッドは307㎤と当時では最大クラス。また、径が太いシャフトも採用しました」。

460㎤全盛の今にすれば小さく感じるのも無理はない。しかし、そのころは250〜260㎤程度が平均。300㎤オーバーがいかに大型だったか。

「できることなら、もう少し大きくしたかった。ですが、当時の技術、世界初のケミカルミーリングを採用したものの、307㎤が限界でした」。

一方、径の太いシャフトも話題を呼んだ。シャフトメーカーからはビッグバットと呼ばれる手元が太いシャフトも発売されるに至る。

「クラブを長くすると振り遅れが懸念されます。そこで、グリップ側を太くすることでリストターンをしづらくしました。また、大型ヘッドは重心距離が長くなる関係でスイング中に重く感じますが、太さはそれを抑えてくれるメリットもあります。“今では太いシャフトはなくなってしまったではないか”とも言われますが、これを境にシャフトは太いことが当たり前になり、ゴルファーが気づかなくなってしまったのです。『ゲロンディー』のシャフトが“極太”としたら今は“中太”、それ以前のものは“細”でした」。

太さ

さまざまな方面に
影響与えるも……



結果は、先述のように他メーカーが後追いしたり、プロが使用したりと、「ゲロンディー」は大ブームを呼ぶ。

「ある雑誌の企画で米PGAツアーにも持ち込みました。長尺を打てそうなスイングのプロに渡すと、“ルール違反じゃないのか? だったら、すぐ契約する”と、飛びが即座に評価されたのは嬉しかったですね。ところが、この話にはオチがあって、いざ試合が始まると誰も使わない。なぜ?と尋ねると、“どこまで飛ぶかわからないから怖い”、そんな声が返ってきました(笑)」。

コンベンショナル

シャフトに食指を動かしたメーカーもあった。

「ある米国メーカーが興味を持ち、10本送ってほしいと。その後、(そのメーカーの)シャフトは太くなりましたね」。

一般ゴルファーをはじめ、様々な方向に影響を与えた『ゲロンディー』。だが、そのブームは次第に沈下していった。その後、台頭する高反発フェースが徐々に話題になり始め、それに押された印象もあった。

「長尺は絶対的に距離が出ますが、しばらく使っていると、(その距離に慣れて)一般のゴルファーは次第に力を抜くようになってしまっていた。その結果、最初の頃ほど飛びが実感できなくなり、(ゴルファーは)離れていってしまいました。ただ、『ゲロンディー』を出してから6〜7年後のこと、あるプロゴルフ協会の方から、次を出さないから替えられないじゃないか、そんなクレームもいただきました(笑)」。

ヘッドありき、
シャフトありき



竹林が悔やんだように、今思えばややヘッドが小さすぎたのかもしれない。今のような460㎤サイズがあったらはたして……。

gelongD

「僕はドライバーに関しては、ゴルファーに合った適正長さがあるとは思っていません。まず、ヘッドサイズやシャフト重量ありきで、その中でできるものなら変わっていいんです。例えば長さを伝えず、46、47、48インチをゴルファーに渡すと、ほとんどが48インチが振りやすいと言う。それが『ゲロンディー』が48インチを採用した理由でもあります」。

先入観が邪魔をする、クラブには往々にしてあることだ。

「今、当然のようにあるスペックも、条件が変化すれば変わっていくもの、僕はそうとらえています」。

その後もフォーティーンのドライバーは現最新モデル「CT518」に至るまで変わらず長尺にこだわり続けてい。体積は機能・設計意図に応じた最適サイズ、長さはR&A測定法に準じた47・75インチ。ヘッドには最適重心、ルール限界の高反発など飛びの3要素を加え、さらにオリジナルシャフトでは、しなりの特性を突き詰めエネルギー伝達効率を高めながら挙動を安定させている。長尺のパイオニアとして、これからも最大飛距離を求め続ける姿勢に変わりはない。